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2015年10月19日│連絡船の町プロジェクト・勉強会

『船』の起源~人類最古の交通機関~

『船』の起源~人類最古の交通機関~

1 船のはじまり
大海原をゆったりと進む船の姿は美しいものです。海を渡って他の場所へ行くことは、いつの時代も人々の憧れだったに違いありません。船の歴史は、人類の歴史とともに始まったとも言われています。
歴史上、誰が船を最初に発明したか、どのようなものであったかは、わかっていませんが、船の始まりは、大昔、水辺に住み着いた人類が、水面を流れる木の枝に、小鳥や虫たちが乗っているのを見て、その浮力に気づき、やがて、イカダや丸太舟などを考案した事だとされています。
こうして、船という形はできあがりました。いつの頃かはっきりしませんが、考古学的に知られている限りは、
中国浙江(せっこう)省の河姆渡(かぼと)遺跡(紀元前7000年~5000年頃)から、丸木舟の断片が発見されています。また、初期の船の材料としては、葦も多用されたと考えられます。古代エジプトやチグリス・ユーフラテス流域では葦の船が一般に用いられたようですが、葦船は遺物が残りにくく、考古学的には物証が得られていません。もっとも古い船の原型の一つは、丸木舟であるようです。その他にも、材木を束ねた筏、木の枝を組み合わせた骨組みに動物の皮をカバーにした皮船などがあります。
これらの船は、現在でも世界各地で使われています。チベットに見られる皮袋の船、南アメリカのチチカカ湖の葦船、アフリカのナイル川で見られるパピルスの舟などがあります。

2 日本の船、海運
(1)先史から中世へ
日本でも縄文時代の遺跡の中から丸木舟が出土しており、先史時代の発見例はおおよそ200例ほどあります。また、古事記に水蛭子(ひるこ)をこの舟に乗せて流した話も残っています。7世紀から8世紀にかけて、遣唐使船(大きさは長さが30m、幅7~9m、排水量約300t、帆柱2本で平底箱型。鉄釘はほとんど用いず、平板をつぎあわせて造っていました。そのため波切りが悪く、不安定で、強風や波浪に弱いという欠点がありました。)など海外渡航用の船の多くが瀬戸内地方の安芸国(現在の広島県)で造られていました。はっきりとしたことは、明らかになっていませんが、このあたりが古くから造船の町であったことがうかがわれます。
鎌倉時代になると、平安時代から活発であった内海地域の経済活動が日宋貿易に刺激さ
れて活況を帯び、この頃、瀬戸内海においては年貢輸送の他商品輸送も増加し、港湾都市が繁栄しました。

(2)近世
中世のアジア貿易の遺産を受け継いだのが朱印船です。朱印船は、16世紀末から17世紀初頭にかけて江戸幕府から異国渡海朱印状を交付されて渡航した貿易船で、当時日本と外交関係があったポルトガル、オランダ船や東南アジア諸国の支配者の保護を受けることができました。
この頃、民間で使用される船としては、河川での運搬に高瀬舟、漁撈に使われた平田舟、伝馬船などがありましたが、搬送性能と経済性の高さから発達したのが千石船と俗称される弁財(べざい)船(弁才船)です。中世末期から瀬戸内海を中心に発達した商船で、江戸時代前期以降、国内海運の主役として活躍しました。
江戸時代になると船の往来はますます頻繁となり、瀬戸内海の海運は黄金期を迎えまし
た。江戸時代の中期には大坂と蝦夷を結ぶ北前船が登場し、それ以降、沿岸の港に立ち寄らず瀬戸内海の中央を抜けていく沖乗り航路が発達しました。この航路は鞆から地乗り航路と分かれ、弓削島、岩城島、木ノ江、御手洗等の芸予諸島の中央を貫いて、津和地、上関で合流するルートをとるものであり、これに沿って弓削島、御手洗などに風待ち、潮待ちの港ができ、新たに町も形成されて活況を呈していきました。
また、将軍の代替わりごとに朝鮮から朝鮮通信使が派遣されることになり、慶長10年(1605)から文化8年(1811)にかけて計12回朝鮮通信使が来朝し、延べ約400名の朝鮮使が瀬戸内海の港町を通っていきました。
さらに、日本各地の産物は、千石船、弁財船によって全国的に運ばれました。大阪が経済拠点として発展したことに加え、西廻り航路の開設もあいまって、瀬戸内海も全国的な流通経済の中に組み込まれ、瀬戸内海海運時代の最盛期を迎えることになりました。

(3)近代
明治期に入っても10年代までは北前船等帆船が用いられ、江戸時代の航路もほぼ維持されていましたが、蒸気船や機帆船の登場や、明治20年代の山陽鉄道の整備などにより、かつての帆船時代の寄港地は徐々に衰退していき、「瀬戸内の港は、まるで水から引きあげた切花のように凋んでしまった」と言われるほど寂れていきました。


船の歴史を探ると人類の歴史が見えてくる!
宇野港「連絡船の町」プロジェクト
参考文献
 
・徹底図解 船のしくみ―人類最古の交通機関「船」の歴史とそこに使われる技術
出版:新星出版社編集部(編集)
 
・図説 船の歴史
著:庄司 邦昭  出版:河出書房新社
 
・面白いほどよくわかる船のしくみ―船の起源から・種類・構造・走るメカニズムまで (学
校で教えない教科書)
著:賞雅 寛而(たかまさ ともじ) 出版:日本文芸社
 
参考資料
 ・公益財団法人千葉県教育振興財団のウェブサイト(丸木舟の写真)
 ・ウェブサイトWikipedia「弁才船」「遣唐使」

【担当:大倉 明】
 


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