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2015年10月19日│連絡船の町プロジェクト・勉強会

県営・無料の渡し船(日本:富山県)

○富山県営渡船とは
富山県射水市の伏木富山港新港地区(富山新港)では、港の西岸・越ノ潟と、東岸・堀岡間約770mをつなぐ渡し船が運航されています。
通称「越ノ潟フェリー」と呼ばれるこの渡船を運航しているのは、富山県富山新港管理局。つまり県営の渡し船なのです。

かつてこの地区は陸続きで、そこには県道があり、富山地鉄・射水線という鉄道も走っていました。しかし昭和42年、富山新港の建設に伴ってこの道路と鉄道が分断されたため、その代わりとして県営の渡し船が運航されることになりました。
当初、分断された鉄道は港をはさんで東西とも存続し、県営渡船は事実上の鉄道連絡船として、地元住民の足となりました。
その後、西側の射水線は廃止され、現在はほぼ同じルートを代替バスが運行しています。東側は万葉線新湊線として、現在も運行を続けています。

乗船料は、運航当初は市民は無料、その他の人は有料でしたが、昭和61年には乗船客全員が無料化されました。また、年中無休、24時間体制で1日118便が運航されていましたが、年々乗船客が減ってきたため、平成16年には夜間の運航が一部廃止され1日97便に。そして平成26年4月からは朝の堀岡6時44分発から夜の8時29分発まで、1日69便の運航となっています。
ただし夜間の船が動いていない時間は、無料の代行タクシーを運行しています。
富山県、太っ腹ですね!

○越ノ潟フェリーに乗ってみよう!
万葉線の終着駅、越ノ潟駅に着くと、目の前に発着場が見えます。日曜日の午後、待合室にはおそらく地元の方2,3名と、ロードバイクチームの男性が5名ほど。ほどなくして船がやってきました。本日の船は「こしのかた」。全長16m、幅5.8m、46トンで、小さく見えますが、乗客だけなら110人、自転車やバイクを積むと80人が乗船可能とのことです。県営渡船では、他にほぼ同じサイズの「海竜」という船もあります。

早速乗船します。手前には自転車やバイクを置けるスタンドがあり、奥は客室になっています。2階にもベンチがあり、天気が良い日は風を受けて走るのも快適です!(ただし、風が強いとかなり揺れます!)

時速8ノット、5分程度であっという間に対岸の堀岡発着場に着きました。なんとも趣のある待合の雰囲気…。
すぐに乗客を入れ替えて折り返し越ノ潟に戻ります。こちらでも2、3名の地元の方が乗ってこられましたが、乗船料が無料なので、チケットも必要なく、あっという間に乗り換えが終わります。

○県営渡船のいま
さて、万葉線越ノ潟駅に着いたときから気になっていたものがあります。それは、港にかかる立派な橋!!
実は、平成24年、富山新港の両岸をつなぐ“新湊大橋”が開通し、平成25年には道路部分の下を歩行者が通れるようになりました。自転車も、押して歩けば通行可能。港の建設で分断された道路が再びつながった形になります。
 
もともとは道路の代わりに運航されていた県営渡船ですから、橋の開通とともに廃止されるという話も出ていたそう。しかし諸事情あって、減便しながらも今も運航を続けています。
渡船の事務所にお邪魔して、富山新港管理局船舶課の方にお話をうかがったところ、平成24年度には年間10万人を超えていた乗客数は、平成26年度には6万6千人余りと年々少なくなってきているそうです。まだまだ平日の通勤・通学時間などに利用される方はいますが、土日などは観光客が利用する割合の方が多いのだとか。

50年近くの長い間、地元住民の足として利用されてきた越ノ潟フェリー。渡船としてのお役目を終える日も近いのかもしれません。興味のある方は、お早めに行ってみてくださいね。近くには帆船海王丸を展示した海王丸パークや野鳥園、市場などもあり、休日のお出かけにもおススメです!!


<調査協力>富山県富山新港管理局船舶課
<参考HP>
富山県 http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1545/kj00006354-001-01.html
万葉線 http://www.manyosen.co.jp/

【担当:小郷原 良美】


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